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maimoi日記 

自分の小さなこだわりに気づいて捨てるために書いています。心に静と柔らかさを得たい。 思い出したときに覗いてください。

『 阿弥陀堂だより 』 読書日記 ①

 

整体に関する実学書ばかり眺めていたら、

無性に小説が読みたくなった。

物語が柔らかい水のように染みてきて、脳みそをゆらす、

隙間に溜まったほこりを、サラサラと洗い流してくれるような心地よさをひさしぶりに感じた。

布団の中でも電車の移動中でも読書に耽った数日だった。

 

『  阿弥陀堂だより

作者 南木佳士

 

作家として自信をなくした夫と、

病気を患い医師としての方向を見失った妻が、

故郷の寒村に戻り、老婆と出会う。

奥深い山にひとり、集落の先祖の霊の守人として生きる老婆の紡ぐ言葉が、

シンプルで深い。

妻の美智子が、

「 自分が病んでみるまで、医者のくせに病気と単なる身体の故障との区別がつかなかった  」と話すのだが、それは、ハッと胸をつく問いだった。

 

生活するということは、

それを人前で話したり、誰にアピールするようなものではない、

とても地味なことで、それはとても大事なものだということ。

 

 

作者の南木さんは、医師として働きながら小説を書いている。

『 生きてるかい? 』というエッセイも合わせて読んだのだが、

ご自身が病気に苦しんだこと、貧村で育った幼い日のことなどが、飾らない言葉でさらりと書いてあった。

 

「 おしなべて本質的に鋭いものの照り返す光は鈍いのである 」

という、清水哲男の詩を、

ワープロで打って医局の机の上に置いているそうだ。

この詩の境地を見事に小説に落としこんだのだなぁと、感動した。

 

 

阿弥陀堂だより (文春文庫)

 

生きてるかい? (文春文庫)