maimoi日記 

自分の小さなこだわりに気づいて捨てるために書いています。心に静と柔らかさを得たい。 思い出したときに覗いてください。

言葉

 

JR渋谷駅西口の歩道橋を渡ると、「 さくら通り 」という名の桜並木がある。

勾配のきつい坂道だけど、

ここから施術室まで歩いて10分程度なので、行き帰りにときどき通る。

 

夕方、この坂道を下っていたら、

腰が90度に曲がったおばあさんが、桜の木を見上げていた。

その後ろに、うつむいて歩く小学生、

楽器を背負った若い子、背広姿の人、、

すれ違う人たちを見るとはなしに見ながら、考え事をしていたら、

「 大丈夫 . 大丈夫 . 」と、

語尾にスタッカートがついているような、明るい小さい声が聞こえた。

 

その日、午前中、胸椎四番の左一側で脈を変化させるという練習をしていて、

脈診で高潮期と低潮期は一拍の前後のスタッカートで見分けられると教わった。

その稽古を反芻して頭のなかで反省点をこねくり回していたので、

ふわっ と耳に入った〝 大丈夫 〟という一言に、体が弛んだ。

坂道を上がってくる年配の女性の、独り言だった。

 

ふっと視界が開いて、自分のまわりの空気がなんとなく柔らかくなる、

誰もが一度は経験したことがあると思う。

言葉に背中をおされた感じで、気分が楽になったのだけど、

連想して思い出したことがある。

 

数ヶ月前、地下のBar でジャズを聴いていて、

その時私は、すこし咳をしていた。

弟子を連れた整体師というおじさんが近くのテーブルに座っていて、

咳、大変ですね。と、話しかけてきた。

「私は、触らなくても背骨が見えるんですよ。」と仰った。

 

胸椎三番は呼吸器、息を吸うとき横隔膜が収縮して胸郭が広がるので、

吸気に関係するといわれている。

よろしければお身体見ますよ、と言われて、

お連れのお弟子さんの手前、素直にお願いしたのだけれど、

「 頸椎三番が固くなっているので、言いたい事を素直に口に出せない方でしょう。」

「 前に一歩踏み出そうとしている、そういう骨の状態です。」

大丈夫ですよ、と調整後に励まされた。

 

一緒にいたパートナーが、

ああいう根拠のない観念的なことを簡単に言う人は信用しない、と帰り道つぶやいていた。

実際、抑制や我慢をすることで胸がつまるように感じるときは、

胸椎三番が硬直しているし、

胸を弛めようとする運動で、咳がでることもある。

でも、その違和感よく分かる。

 

師匠のそういう言い回しを見ている弟子は、きっとそこを真似るだろう。

テクニックとして言葉を使っている人は、一寸温度差があって、

自分の言葉に酔ってしまっている印象を受ける。  

心身療法に携わる人はとくに陥りやすいと思うのだけど、

指導者の言った言葉や文献のなかに、そのように書かれているからそうなんだろうと、

安易に専門言葉を操る癖がつきやすい。

 

暖かい言葉は、思ってもいなかった隙間からすっと入ってきて、

一雫波紋が湖水に広がるように心を揺らす。

施術でも、きっとそれができる。

地味な型の稽古の繰り返しで落ち込んだりあきらめたりせずに、

磨いた技術で、背中を押せるようになりたいな。

 

 

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( 2013年   京都 桜守の方のお庭 )

 

 

 

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