maimoi日記 

自分の小さなこだわりに気づいて捨てるために書いています。

クレーム

 

着物を縫うときは、アイロンではなく和裁用のコテを使う。

コテは小さくて小回りが利き、

カンカンに熱したコテ釜に入っているので、指先に唾をつけて熱したコテに触れ、パチっとか、ジュッというはぜる音を耳で聞き分けて、温度を調節する。

 

温度がほんの少しでも高すぎると、

縮んだり溶けたりすることがあるので、コテの温度は、

指先で覚えた感覚が頼りだった。

縫い手が変わると、仕上がりが悪くなるので、一枚の着物は一人で最後まで仕立てる。

 

5年間は着物を縫う仕事をして、

5年間は呉服屋で、採寸、検品と納品を受け持った。

接客をすることで、着物を着る人がリアルになった。

指示書の寸法通りに縫うだけだったのが、

顔を合わせて、寸法を取り、検品後、お客さまに納品して、着姿を見たり感想をいただくようになって、

肉付きや姿勢、着方の好みは、一人ひとり丁寧に見なくてはいけないと実感した。

 

色んな方にお会いしたけれど、着物が好きで休日によく着るという、ほんとに厳しかったお客さまは忘れられない。

一番着やすい着物をお持ちいただいて寸法を取って、新しい紬を仕立てたのだけど、

一ヶ月後にクレームがきた。

紬といっても、産地によって糸のヨリも織りの密度もまったく違うので、同じ寸法に仕立てても着やすさが違う。

丁寧に説明をすると分かってくださるのだけど、とにかく細かくて、

ひとつひとつ解決して、また新たに着物を仕立てると、

ここが気になる、とすぐに持ってこられる。

 

和裁士は私一人で、納品後いつも数ヶ月はヒヤヒヤドキドキしていた。

何度もやり取りを繰り返して、だんだんとその方の好みを理解していった。

 

最後、来月ここを辞めるんです、とご挨拶したときに、

「あら残念だわ」と仰っていただいて、泣きそうになってしまった。

怖かったけれど、

とてもありがたいお客さまだった。

 

 

 

 

 

 

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〝 神と天国と地獄は己の中に 〟

「 13時間 ベンガジの秘密の兵士  」より。

 

全然関係ないのだけれど、ちょっと前に見た映画。

リビアで、イスラム過激派によるアメリカ領事館襲撃事件という実話をベースにしたもの。

戦争の映画はわりと見ます。フィクションもノンフィクションも。

無知が恐怖心を増すから。